ZOO(乙一)

後輩から勧められたので、何はともあれ一、二巻を買って読んでみました。図書券がちょうど余っていたので、一銭も使わずに手に入れることができました。では、まず一巻からいきましょう。

前半はネタバレ無しで作品の魅力を伝えていきます。後半ではネタバレ上等主義でいきたいと思います。予告なくネタバレ部に入るので、気をつけてください。

各章の感想

カザリとヨーコ

シングルマザーからの虐待を受けている娘視点で描かれた作品。最後は綺麗にオチます。乙一さんの作品を読んだのは、これが初めてでした。「乙一とはこういう作者だ!」というものを大いに感じさせてくれる作品だと思います。オチも分かりやすく、何も考えずに読むことができます。

さて、肝心の内容ですが。いつも通りのブラックな内容で、読みやすいものとなっています。主人公が母親から受けるその仕打ちをあたりまえだと感じている点で、より残酷に感じられます。オチに至る過程でいろいろありますが、正直あまり必要性を感じません。どん底から持ち上げて、突き落とすという流れですが、あそこまで引っ張る必要があったのか疑問です。スズキさんが死んだという事実に対してそこまで絶望することもなく、一瞬で処理されてしまいました。死自体がオチにつながる直接の原因になっていないのも挙げられます。

しかし、乙一作品の雰囲気を知るにはぴったりな作品ではないでしょうか。

SEVEN ROOMS

ZOOの中で二番目に好きな作品です。「狂っている」という表現が一番かと思います。最大の謎は最後まで明かされることはありませんが、そこに潔さを感じました。普通に生活している姉弟が突然さらわれ、謎の部屋に閉じ込められます。弟がぎりぎり通り抜けることができる排水口を抜けると、左右に同じような部屋が七つ存在し、そこにも同じような境遇の人が閉じ込められていることを知ります。閉じ込められた人たちとの会話内容から、姉はある法則に気づきます。

謎に包まれた作品で、最後までその謎が明かされることがありませんし、その謎を含めた先の展開も気になる終わり方です。先を読ませるストーリで、息もつかせず一気に読みきってしまいたくなります。

さて、内容ですが。単純に読んで楽しい作品でした。乙一作品に総じて言えてしまうことですが、主人公が切れ者過ぎます。最期まで読んで、「あれはこのための伏線だったのか」と気づきました。閂の件ですが。面白かったです。

SO-far そ・ふぁー

ふたつの世界を行き来できる子供の話です。俗にいう、平行世界というやつです。「サイコロの奇数が出る場合」と「サイコロの偶数の目が出る場合」が等しく出現しうる場合、それぞれの未来が並行して用意されているという、タイムパラドックスでも用いられる考え方です。この作品では、母親が死んだ世界と、父親が死んだ世界が平行に存在し、それらの世界を行き来できるものです。

実は最後にオチがあるのですが、正直、これは本当に要るのか疑問です。無理にオチを付けなくても良かったのではないか思います。それまでの展開は面白かったです。

陽だまりの詩(シ)

一番好きな作品です。メルヘンながらSFチックに仕上げていて、本当に興味深いです。映像化したらしいですが、その理由がわかります。目が覚めると主人から自分がロボットであることを宣告され、疫病に侵された主人の世話をするために作られたことを知ります。ロボットなため死の概念について理解出来ないわけですが、主人や畑のうさぎと生活するにしたがって、次第に死について自分なりの考えを持つようになります。

最後に読めやすいオチがありますが、そんなの関係ないくらいに面白いです。

ZOO

タイトルにもなっている作品ですが、私はそこまで面白いとは感じませんでした。主人公が狂っていますが、それ故、表現がくどい場面が多いです。オチは早々に明かされるのですが、だからといって、そこから楽しめる要素はありません。主人公の狂い具合とその思考パターンを読んでいく感じです。

一応、最後にオチらしくないオチはあるのですが、正直微妙です。

総評

勧められて読んでみたのですが、個人的に、かなりアタリだったと思っています。ZOO2も買っているので、続けて読んでいます。書評などしたことがない(他人の書評も普段読まない)のでやり方が分かりませんでしたが、こんな感じかなという雰囲気でやってみました。

今回の本はこちらです。アフェリエイトとかは考えてないので、とりあえずリンクだけ張っておきます。

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